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第18話 いつまでも……

last update Last Updated: 2025-07-12 16:32:09
 窓から外の景色を眺める。

 白く小さな塊が、ちらちらと空から降りてくる。

 今日は特に寒いと思っていたら、雪がちらつき始めていた。

 さくらは懐かしそうに目を細めた。

「私たちが出逢ったのも、こんな雪の日だった」

 小さくつぶやくさくらを、聖は優しい眼差しでそっと見つめる。

 肩を抱く手に、少しだけ力がこもるのを感じた。

「そうだね、君と出逢ったから――“この子”もいる」

 愛おしそうに見つめる先には、さくらの腕の中でスヤスヤと眠る赤ん坊。

 聖が優しい手つきで赤ん坊を撫でる。

「……優希(ゆき)」

 さくらが囁くと、赤ん坊は笑った。

「あ、笑った」

 聖が嬉しそうにはしゃぐ姿を見て、さくらが可笑しそうに笑う。

 そのとき、部屋の扉が勢いよく開いた。

「おい、優希はいるか」

 誠一が部屋に入ってくる。

 彼は優希が生まれてからというもの、毎日のように訪ねてくるようになった。

 優希が可愛くて仕方ないらしい。

「優希、いつ見てもおまえは可愛いなあ、将来は美少女になるぞ」

 優希の顔を眺めデレデレしている誠一の表情からは、昔の面影は微塵も感じられない。

 いつも無表情で、怒っているような顔をしていたのに。

「誠一さん、いつもありがとう」

「兄上、近づきすぎです」

 二人のことなど目に入っていないかのように、誠一は優希に夢中だった。

 聖と誠一が由紀の争奪戦を繰り広げていると、また扉が大きな音を立て開く。

「おう、みんな揃っとるな」

 今度は智彦が笑顔でこちらへ歩いてくる。

 智彦も優希の顔を見ないと気が済まないらしく、毎日訪ねてきていた。

「優希ちゃーん、おじいちゃんですよぉ。今日も一日元気でしたかぁ」

 すっかり孫が可愛くてしょうがないおじいちゃんと化している。

 優希を見る、その鼻の下は伸びきっていた。

「お父様、いつも優希を可愛がってくださってありがとうございます」

 さくらが智彦に微笑むと、智彦は嬉しそうに頬を染める。

「いや、なんの。さくらと優希のためなら、私はなんでもするぞ」

 智彦はさくらのことも可愛くて仕方がないらしい。

 自分の妻と子に鼻の下を伸ばす父を見て、複雑な心境になる聖だった。

 そして、また次の来訪者がやってきた。

「優希様はまだ起きていらっしゃいますか?」

 礼儀正しく一礼し、部屋へと入ってくる。

 旭もまた優希の
桜 こころ🌸

最後まで読んでくださって、ありがとうございました! さくらが聖と出会い、もがきながらも未来と向き合った日々―― 少しでも楽しんでいただけたなら、本当に幸せです。 いつかまた、運命の糸が繋がって、新たな物語でお会いできますように♡ ✿ 完 ✿

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